ガンマ線バーストのフロンティア

ガンマ線バースト想像図 (イラスト:NASA / SkyWorks Digital)。

(ロング)ガンマ線バースト(GRB)の理論モデルによればガンマ線バーストは重元素量の少ない環境でしか起こりません。 一般的に重元素量は観測的に静止系紫外可視光で測定されます。 ところが赤方偏移1-2のような遠方宇宙のガンマ線バーストはダスト吸収の影響を強く受けた銀河の中で起こる例が多く、重元素量を測定することができません。 これに変わる「ダスト吸収に強い新しい指標」が長年待たれていました。

私は近年アルマに搭載された新たな検出器(バンド9)を用い、世界で初めて赤方偏移2にあるGRB母銀河の[CII]158um輝線の検出に成功しました (図1)。 この輝線強度と赤外線光度との比は、同じ赤方偏移にある星形成銀河に比べて遥かに低く、GRB母銀河を特徴付ける新たな指標をついに発見する事ができました。 遠赤外線を用いたこの指標はダスト吸収の影響を受けません。 モデル計算によればこの比は重元素量、紫外線輻射強度、初期質量関数、ガス密度等によってコントロールされていると考えられています。

図1: (左図) アルマで捉えた赤方偏移2(およそ100億光年彼方)にあるガンマ線バースト母銀河の[CII]158um輝線。赤線はガウシアン関数による輝線のベストフィット。破線は観測誤差の程度を表しています。連続光は差し引かれています。(右図)  [CII]158um輝線を+-125 km s^-1 積分した輝線マップ。図の中心がガンマ線バースト母銀河の位置です。連続光成分は差し引かれています。楕円はアルマ画像の解像度に対応します。
図1: (左図) アルマで捉えた赤方偏移2(およそ100億光年彼方)にあるガンマ線バースト母銀河の[CII]158um輝線。赤線はガウシアン関数による輝線のベストフィット。破線は観測誤差の程度を表しています。連続光は差し引かれています。(右図) [CII]158um輝線を+-125 km s^-1 積分した輝線マップ。図の中心がガンマ線バースト母銀河の位置です。連続光成分は差し引かれています。楕円はアルマ画像の解像度に対応します。

これらの内容は英国王立天文学会月報 (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society) に掲載されました。

Tetsuya Hashimoto, Bunyo Hatsukade, Tomotsugu Goto, Seong Jin Kim, Kouji Ohta, Tohru Nagao, Albert K. H. Kong, Kouichiro Nakanishi, and Jirong Mao, 'Star-formation rates of two GRB host galaxies at z~2 and a [C II] deficit observed with ALMA' , Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, (2019).

橋本哲也
橋本哲也
助教 (NCHU)